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症例
随時更新予定
月経困難症
月経困難症とは月経に随伴しておこる症状で、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などに起因する器質性月経困難症と検査で異常がみられない機能性月経困難症に分けられる。月経前症候群(PMS)は発生の時期を表すもので月経困難症の中に含まれる。
多くは機能性で、月経痛の原因はプロスタグランジンによる子宮筋の過収縮によるものとされており、阻害薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)による鎮痛作用でしのぐしかなく根本的な治療法は確立されていない。
月経困難症は就労女性の約3人に1人に認められ、作業率の低下や就業困難にまで至る。思春期の女性では70~90%にまで及ぶ。痛みが無くともイライラ、便秘、眠気、倦怠感などの月経随伴症状を含めるとほぼ全ての女性が経験している。
中医学では瘀血・血虚・血熱など多くは血の病態として捉えられており、鍼やお灸、漢方などで体質から改善していく。
当院の治療は月経開始の1~2週間前に治療を行い、1回目から5~8割の痛み軽減が認められ、早い時には2回目で寛解に至ります。以降は再発防止としてメンテナンス治療を1~2ヵ月に一度継続する。
20代女性
18~19歳頃から痛みがひどくなった。ほぼ毎回で冬のほうがつらい。薬が手放せない状態。月経開始前1週間~開始後3日まで。ピークが初日と二日目。18~20歳の時に貧血で倒れかけた。下腹部と腰部~仙骨部の痛み。後面の方が痛い。イライラし、頭痛もある。月経周期は長く、遅れがち。
初回治療後
月経痛は8割緩和、気分もイライラせず落ち着く 月経周期が正常範囲内に戻る
2回目治療後 翌月の月経の1週間前に治療
月経痛は無くなり寛解
3回目以降
月に一度月経の1週間前に定期的にメンテナンス治療を継続
過労やストレスが多い月は若干月経痛がある時もあるが薬を飲むほどではない。
30代女性
10代の頃から月経前症候群(PMS)を患っている。月経開始4日前ぐらいから下腹部の痛みや頭痛がありイライラする、ひどい時は薬も効かず嘔吐し、仕事を休むこともある。湿度が高いと増悪。
初回治療後
月経痛は5割緩和 月経が普段より早く来た。量が最初多く後に少量が長く続いた。
2・3回目治療後 翌月の月経の2週間前と1週間前に治療
月経痛は8割緩和 周期は前回と同じ 量は落ち着いた
4回目治療後 翌月の月経の1週間前に治療
梅雨で雨が続いたせいで体調はあまりよくなかった
月経痛はまだあり8割緩和
5回目治療後 翌月の月経の1週間前に治療
月経痛は無くなり寛解
6回目以降
1~2ヵ月に一度メンテナンスとして治療。天候や疲労、ストレスによりたまに痛みがあるが薬を飲むほどではなくなる。
バセドウ病
バセドウ病とは甲状腺機能亢進症の中の代表的な疾患で自己免疫疾患のひとつ。
症状がおさまる事はあるが、完治はしないとされている。
代謝をつかさどる甲状腺ホルモンや交感神経系のカテコールアミンの過剰分泌により頻脈、振戦、イライラ、発汗過多、倦怠感、軟便、下痢、筋力低下、眼球突出、頸部腫脹、周期性四肢麻痺などをきたす。
主に免疫細胞(マクロファージ、樹状細胞、B細胞)に発現するMHCクラスⅡ分子(HLA-DP5)が
通常では存在しない甲状腺組織に発現し、TSHRと複合体を形成してヘルパーT細胞に抗原を提示。
更に抗原性が変化したTSHRは自己抗体の産生を強く誘導し、免疫寛容を破綻させる。
治療法はまず薬物療法を行い、寛解しなければアイソトープ治療や摘出手術となる。
薬物療法による寛解率は約半数で、完治したわけではなく寛解した約半数は再発し、生涯経過観察をする。摘出をすれば甲状腺ホルモンが分泌されなくなるためホルモン剤を飲み続ける必要がある上、甲状腺機能低下症の症状が出現する事が多い。
中医学では気が滞ったものが上逆し熱化した状態と捉え治療を行う。
当院ではバセドウ病による症状に対してではなく原因である自己免疫の異常に対して治療を行い、甲状腺ホルモンT3、T4の値ではなく原因となっているTSHレセプター抗体(TRAb)の発現を抑えて数値正常化、完治を目指す。
40代女性
X1年 11月
前脛骨部の足のむくみと全身のだるさ。午後から座れないくらい疲れる。息切れもある。発汗異常、下痢、頻脈と強い脈、頭痛、のぼせと顔面紅潮、手足の振戦を自覚。
X2年 1月
病院でバセドウ病と診断。T3T4高値、TSH低値。抗TSH受容体抗体陽性。
服薬による治療開始後は下痢は改善したがそれ以外の症状に変化は無し。
X2年 5月10日 鍼灸治療開始
X2年 5月22日 病態が寛解へ急転、薬量減少が追い付かずT3、T4低値、TSH高値
X2年 9月25日 薬は初期の15mg3錠から2.5mg1錠まで減り、T3,T4、TSH正常。
TRAb10.5→3.74
X3年 1月31日 県外へ転勤のため最終治療
X3年 7月3日の検査結果では寛解 T3、T4、TSH、TRAb全て正常値。服薬は継続し経過観察中
約半数が薬物療法で寛解するため鍼灸治療単独の効果としては評価できない。
しかし、服薬開始後T3,T4正常化でTSH低値がしばらく膠着状態だったが鍼灸治療開始後にTSH高値となり薬処方量の減少へと転じた。これも偶然重なった事は否定できないが、担当医の話では通常よりも早いペースで寛解へ向かい始めたので薬の減量が追い付いていないという。
現在はTRAb正常値で寛解し経過観察中。県外転勤のため当院での治療は中止。
現代医学では完治させる術が無い疾患なので、再発し薬物療法が有効ではなくなったりアイソトープ治療が不適な患者は切除という選択をする前に可能性として鍼灸治療や漢方、生活習慣改善での治療効果はないのか一考するきっかけになる事を願う。
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